2010/11/18 (Thu) 09:04
文藝春秋
2010年9月
妊娠をきっかけに会社を辞めることになった、ほとんど口をきいたことのない同僚が最後の日に告げた言葉。会社の近くで働く靴職人の青年がなぜか気になってしまうわたしのとった行動。記憶にない男性からのメールがわたしの心に起こす小さな波。日常の中にあるさまざまな「お別れ」の瞬間を鮮やかに切り取った6篇。史上最年少の川端康成文学賞作家によるちょっとせつない世界。
風情を感じさせる、多分、行間を読み取るような小説かな、と思いました。
そして、私はそれが苦手です。半分読み取れたかどうか…。
その場では思ったことでも、記憶からすり抜けてしまうような些細なことがしっかり表現されているのが、とくにリアルに感じました。
内容★★★
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2010/11/17 (Wed) 14:07
小学館
2010年9月
この愛に、賛否両論。性愛も血縁も超えた愛のカタチ。
「母が死んで、『死にたい』と思っていた僕の何かは死んだ』。14歳で母を亡くした浩輔は、本当の自分の姿を押し殺しながら過ごした思春期を経て、しがらみのない東京で開放感に満ちた日々を送っていた。30代半ばにさしかかったある日、癌に冒された母と寄り添って暮らすパーソナルトレーナー、龍太と出会う。彼らとの満たされた日々に、失われた実母への想いを重ねる浩輔。しかし、そこには残酷な運命が待っていた・・・。
龍太と母を救いたいという浩輔の思いは、彼らを傷つけ、追いつめていたのか? 僕たちは、出会わなければよかったのか? 愛とは、自らを救うためのエゴだったのか? 浩輔の心を後悔の津波が襲う。人は誰のために愛するのか。賛否両論渦巻く、性愛も血縁も超えた愛のカタチ。類まれな筆力で読む人を圧倒する注目の大型新人・浅田マコトの書き下ろしデビュー作。3度読んで、9度泣いてください。
深いですね。
ここに描かれているのは、普通の男女間の愛ではなく、他のカタチ。
人を愛し、その人のために何かをするということは、突き詰めてしまえば、自分のしたいこと=自己満足といえるのかもしれません。
でも、それで相手が幸せになれるなら、そんな素晴らしいことはないと思います。
施して救われる人、施されて救われる人…。
人の数だけ人生があるように、人の数だけ幸せも違うのだと改めて気付かされました。
涙なしには読めない本です。
内容★★★★★
2010/11/13 (Sat) 21:15
小学館
2010年5月
ダフ屋を生業とする冷徹な男ガジロウは、ある日 クルマに轢かれるが、無傷で意識を取り戻す。
慰謝料をふんだくろうと相手をさがすと、轢いた車に乗っていた4人はすでに死んでいた。
呆然とするガジロウの前に死んだはずの4人が現れ、成仏できるよう
心残りを解消する手助けをしろと頼んできた。
成仏できたら遺産をもらうことを条件に、ガジロウは要求をのむが、1人また1人と願いをかなえる努力をしていくうちに、ガジロウの心に変化が現れる。そして最後の一人になったとき……。
最高に素敵な奇蹟の物語。
ベタですが、素直に泣いちゃいました。
ジコチューなガジロウの心の変化が自然でよかったと思います。
どんなに無様でも、必死な人の姿ってカッコイイですね。
幽霊の存在を信じることは出来ない私ですが、死んでしまってもこんな風に思いを遂げるチャンスは欲しいですね、なんてなんとなく思ってしまいました。
タイトルはなかなかにトリッキーでした。
内容★★★★
2010/11/13 (Sat) 10:27
光文社新書
2010年8月
「街場」シリーズ第4弾、待望の新刊は「メディア論」!
おそらくあと数年のうちに、新聞やテレビという既成のメディアは深刻な危機に遭遇するでしょう。この危機的状況を生き延びることのできる人と、できない人の間にいま境界線が引かれつつあります。それはITリテラシーの有無とは本質的には関係ありません。コミュニケーションの本質について理解しているかどうか、それが分岐点になると僕は思っています。(本文より)
テレビ視聴率の低下、新聞部数の激減、出版の不調----、未曽有の危機の原因はどこにあるのか?
「贈与と返礼」の人類学的地平からメディアの社会的存在意義を探り、危機の本質を見極める。内田樹が贈る、マニュアルのない未来を生き抜くすべての人に必要な「知」のレッスン。神戸女学院大学の人気講義を書籍化。
僕は自分の書くものを、沈黙交易の場に「ほい」と置かれた「なんだかよくわからないもの」に類すると思っています。誰も来なければ、そのまま風雨にさらされて砕け散ったり、どこかに吹き飛ばされてしまう。でも、誰かが気づいて「こりゃ、なんだろう」と不思議に思って手にとってくれたら、そこからコミュニケーションが始まるチャンスがある。それがメッセージというものの本来的なありようではないかと僕は思うのです。(本文より抜粋)
大変勉強になりました。また自分の中の視点が増えたように思います。
あまり考えてきませんでしたが、マスコミのビジネス化に納得。芸能人のスキャンダルとかでは、そう感じなくもなかったですが、医療・教育問題も言われてみれば確かにそうですね。テレビや新聞の報道は信頼できる、というのが自分の心のどこかにはあったのですが、そういう考えも直さなくてはいけないようです。
また、本棚のお話もすごく同感。確かに、本を購入するときにこうなりたい自分というのを描いているように思います。未読既読は関係なく、自分を見つめるためにも重要ですよね。うんうん。
著作権についても、いろいろ考えなければいけないときかもしれませんね。詐欺みたいな本も確かに存在するし。
結論がでていないこともありますが、良質な問題定義を与えてもらったということで、これから考えてゆきたいと思います。
内田樹さんの本は初読ですが、いろいろ読んでみたくなりました。
内容★★★★★
2010/11/12 (Fri) 09:42
風塵社
2010年9月
「事実は小説より奇なり」本編収録の事件は、著者である麻田恭子氏自身が体験した事件のなかからいくつかを選び出して再構成し、当事者が明らかにならないように加工したものである。
著者略歴:1952年東京都生まれ。1974年北里大学衛生学部卒業。その後約15年間、海外旅行の添乗員を勤める。1991年立教大学法学部入学、1995年同大学院、故井上治典教授に師事、民事手続法専攻。1998年加地修法律事務所(現在の赤坂溜池法律事務所)勤務。当事者が納得のいく論争または対話ができるよう、弁護士との協働を目指し、現在に至る
まるで小説のような事件の数々。現実にあるんですねぇ、こういうこと。
そういう驚きだけでなく、法律への問題定義も盛り込まれています。
法律が必ずしも公平というわけではなく、人々のためにあるはずがそうではなくなっているものなどがあることを改めて認識させられました。
錯覚してしまいがちですが、法律は絶対でもないし、必ずしも護ってくれるものではないのですね。
また、弁護士の信念によってやり方がまったく違ったり、得意分野があったりと、弁護士選びがかなり重要であることも学びました。
さらに、裁判官の法服が1着しか支給されないなどのウンチクも学べ、、得した気分です。
内容★★★★★