2011/08/18 (Thu) 10:21
光文社
2011年6月
「私」は、アルバイトと自分を含めて五人の広告制作会社を営んでいる。広告業のかたわら小説を書き、二冊の本を出している。会議中に、母親から電話があった。入院している父親の容態が悪くなり、医者から、会わせたい人は今のうち呼ぶように言われたという。函館に飛ぶ。父は、生体情報モニタという機械に繋がれていた。父とは不仲だったわけではないが、男同士で腹を割った話をした経験も、二人きりの親密な体験をした記憶もない。母から原稿用紙の束を渡された。父が書いていたものだという。本にしたくて、専門家のお前に意見を聞きたいんじゃないかと。父は八十年間、北海道で暮らしていた。出世したとは言い難い会社員、見合い結婚、子どもは「私」と妹の二人。平凡な人生を綴ったであろう厚さ四、五センチの原稿を息子以外の誰が読みたがるだろう。読み始めた。少年時代に羆の一撃を食らい、祖父とのニシン漁で学資を稼ぎ、北大文学部の英文科を目指すところまで読んだ時点で、父は事切れた。すべて初めて知ることばかりであった。最初は、素人が陥りやすい自慢話と思ったが、その後創作と思うようになる。葬儀まで暦の関係で日にちが空き、物言わぬ父の傍らで読み終えた。そして葬儀の日、すべては明らかになった……。 一人の人間が死した後に厳然と残り、鮮やかに浮かび上がってくるものとは。
テーマ競作小説「死様」の1冊。(4つ目)
人にはそれぞれ自分だけの歴史が在り、やはりそれを誰かに知ってもらいたいという思いがあるのでしょうか。それは生きた証としてなのかな。
「身も心も」でも、文章にはしていないけれど、過去を語っているし…。
私も老いたらそう思うのかな。今はまだわからない。
両親が健在なうちに詳しい話を聞きたい気もするけれど、それもなかなか難しそうです。
内容★★★★
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2011/08/11 (Thu) 14:06
2011/08/06 (Sat) 09:26
新潮社
2011年6月
時速4キロの行進に特に意味なんてない。だけど―野宿して見上げた満天の星の下で、廃校の暗い教室で、気がついた。この国は思ったよりもキレイだし、俺たちって思ったよりも逞しいんだ。哀れんでなんか欲しくない。4人のマーチは、やがて数百人の仲間を得て、国をも動かすムーブメントになっていき…。爽快で力強い、著者初のロードノベル。
今の就職難に直面している人たちに向けた作者からのエールだと思いました。
希望を持ち着実に一歩一歩踏み出せば、必ず道は開ける。そう教えてくれているようです。
何を持って生きているということを実感するのか、いつのまにか必要でないものを買ったり欲しがったりしていないか、などいろいろ考えさせられました。
内容★★★★
2011/07/20 (Wed) 09:28
2011/07/16 (Sat) 11:58