2010/08/12 (Thu) 21:00
文芸社
2010年6月
ある日、貧民街から子どもたちが消えた──。栄達のために、ストリートチルドレンへの凶行に走った黒宮。関係者すべての記憶は消され、事件は闇に葬られた。黒宮はMOC東京本部のトップに昇りつめ、さらに野望を加速させる。はたして、すべてを失った相馬は、真実を暴くことができるのか! そして権力の階段を昇る黒宮の真の目的と、背後にうごめく黒幕の正体は? 記憶争奪をめぐる頭脳戦の果てに、それぞれに待ち受ける運命とは!?
予定調和とはいえない終わり方は、少しだけ現実っぽくてよかったと思います。
しかし、重複というか無駄に再現シーンが多く、だらだらした感じですね。1冊に収まったと思うのですが。そのほうが、作品が締まった気がします。
あと、「ニホンブンレツ」や「リアル鬼ごっこ」でも思ったのですが、主人公と思われる人たちの、煮え切らないというか、行動力がないというか、状況に流されるだけ的な感じが、どうにもすっきりしません。
感情移入はできないなぁ。
内容★★
PR
2010/08/12 (Thu) 18:12
文藝春秋
2010年5月
プロテスタント系の私立女子高校の入学式。中等部から進学した希代子と森ちゃんは、通学の途中で見知らぬ女の子から声をかけられた。高校から入学してきた奥沢朱里だった。父は有名カメラマン、海外で暮らしてきた彼女が希代子は気になって仕方がない。一緒にお弁当を食べる仲になり、「親友」になったと思っていた矢先…。第88回オール讀物新人賞受賞作「フャーゲットミー、ノットブルー」ほか全4編収録。
希代子、森ちゃん、恭子、朱里と、同じクラスの女の子たちの、主役が入れ替わって描かれる連作短編集。
リアルで生々しい女子高生の心理が上手く描かれている小説。
傷つくのがイヤで、自己防衛のために、残酷なまでに相手を傷つけてしまう。そして、傷つけたことを後悔し、自己嫌悪に陥り、自分も傷つく…。
それは思い出したくない過去として心に残ります。
読んでいて、自分が学生だった頃が思い出され、恥ずかしくなったり、辛くなったりしました。
それだけ見事に描かれているということだと思いました。
こうやってみんな、傷つけあって大人になっていくのでしょうね。
最後まで読むと、タイトルにも納得です。
内容★★★★★
2010/08/12 (Thu) 11:37
文藝春秋 文春新書
2010年6月
夢の内閣をつくってみた。大臣たちは、私が慣れ親しんできたローマの皇帝にする─治者とは?戦略とは何か?現代日本が突き当たる問題の答えは、歴史が雄弁に物語っている。大好評『日本人へ リーダー篇』につづく21世紀の「考えるヒント」。
前作に劣らず、勉強になりました。
サミット、国連、オリンピック、仕分け、などなど興味深い意見がたくさんあります。
考え方が揺るぎ無い人は、恰好いいですね。
ただ、低価格化の話題では、あまり同調できませんでしたが。20万円のアルマーニのスーツかぁ。ここら辺はやはり、生活レベルの差を痛感しました。
まあ、同感できる点やそうでない点もあるからこそ、読む価値があるのだと思っていますが。
「(指導者は、)たとえ地獄に落ちようと国民は天国に行かせる、と考えるような人でなくてはならない。その覚悟がない指導者は、リーダーの名に値しないし、エリートでもない」
そうですよね。でもそんな指導者、このところ見かけないです…。
この本読んだら、無性にワインとチーズが欲しくなりました。
缶ビール1本で真っ赤になってしまう私なのですが…。
でも、塩野さんの代表作でもあり、この本にもよく出てくる「ローマ人の物語」だけでもそのうち挑戦したいとは思っています。
内容★★★★
2010/08/12 (Thu) 09:08
文芸社
2010年6月
21世紀末、日本の治安は悪化し凶悪犯罪が増加。特に急増するストリートチルドレンは各地を拠点に犯罪を繰り返し、社会問題化していた。事態を重く見た政府は「記憶削除法」を制定する。見たもの聞いたことすべての記憶が保存されるメモリーチップを全国民の頭に埋め、犯罪が起きた際には証拠とするばかりか、更生不可能と判断された犯罪者へ『記憶削除の刑』を執行するというものだった。 悪用された場合社会が大混乱に陥ることから、『記憶操作官』は国家試験をクリアーした国家公務員が務め、記憶操作機関MOC(Memory Operation Center)は巨大化、厳重に管理されることとなる。 ところが、制度が始まって半世紀以上が経ち、組織は腐敗し、不正が蔓延、所員は権力闘争に明け暮れていた。そんなMOC東京本部に勤める記憶操作官・相馬誠は、違法な記憶操作などを行い出世していく上司・黒宮を尻目に、「あるべき操作官」を目指して職務に励んでいた。ところがある日、ストリートチルドレン・リサのメモリーチップから、思わぬ記憶が見つかる。それを知った黒宮は野望の妨げになることを恐れて驚きの計画を企て、計画を事前に知った相馬はなんとか阻止しようと奔走するのだが……
はたして、相馬は真実を暴くことができるのか! そして権力の階段を昇る黒宮の真の目的と、背後にうごめく黒幕の正体は?
「消えた9時間」をめぐる隠蔽、逃走、復讐劇の果てに、感動のラストが待ち受ける!!
やはり、という感じでした。
期待せずに読みはじめたので、がっかりするのはフェアじゃないのかもしれません。
けれど、なぜこうもスリル感が欠如しているのでしょう?
それは文体にあるような…。
冗長すぎる描写というか、余分な場面が多すぎなのかな?
21世紀末の設定ということですが、メインの頭のメモリー以外は現在と変わらないのは悲しすぎます。もう少し設定を煮詰めてから書くべきでは?
短編ならば、それでもいいのかもしれませんが…。
ただ、読みやすくはあるので、本を読むのが苦手な人には、達成感は味わえるかもしれません。
内容★★
2010/08/11 (Wed) 11:07
産経新聞出版
2010年5月
日本警察の不祥事を組織の裏側から描いたノンフィクション
テレビ朝日系のドラマスペシャルでドラマ化が決定した「落としの金七事件簿」著者の最新作!警察組織幹部の信じられない振る舞いと、それらを覆い隠そうとする仲間意識、そして政治家の思惑が日本警察をピンチに立たせます。
<主な内容>
第1章 新潟県警不祥事
第2章 国家公安委員会の危機
第3章 桶川ストーカー殺人事件
第4章 神奈川県警の連続不祥事
第5章 警察刷新会議
第6章 不祥事の構造と改革
番外編 警察官秘話(警察官と拳銃、生活安全相談)
およそ10年前の警察の不祥事の連発をあまり知らなかった私にとっては、かなり勉強になりました。
発覚していないだけでなく、今はもうそんなことがないように組織体制が変わっていると信じたいです。
警察といっても人の集まりなので、悪い人も中にはいるということでしょうか。
ただそれを、組織ぐるみで隠蔽しようとするのはいただけないです。
また、不祥事の度にトップをすげ替えるというのも、何だか政治と同じで解決には結びつかないような気がしないでもないです。難しいですね。
勿論それだけではなく、拳銃使用について、慢性人手不足など、警察の苦しみについても言及されています。
弱すぎても強すぎても問題があるし…。バランスをとるのは難しそうです。
あさま山荘事件については、映画では観たことがあるのですが犯人側の視点だったので、今回警察側の視点を感じることができ、よかったです。
しかし、田中長官の「弁当は安いのにしたし…」という発言が妙に気になりました…。
内容★★★★