2011/04/17 (Sun) 16:52
集英社
2011年2月
第34回すばる文学賞受賞、鮮烈なデビュー作!
ある日突然、私のそばから人や物が次々に消え始め、それらは最初から「無かった」ことになっていく・・・。当たり前の日常が孕む不確かさと、今ここにある世界のきらめきを色鮮やかに描きだす。
小さなイベント事務所で働く藤田サトミは、職場の久坂から「気になる交差点があるから、次の休みに一緒に観察に行こう」と誘われる。戸惑いながらも、喫茶店で並んで、ひとで溢れかえる休日の交差点を見下ろすことに。「通行人の中から、あるひとを探したい」という久坂と話すうち、職場とは違う彼の一面に触れ、不思議と心惹かれていく。
時を同じくして、サトミのもとに人材コンサルティング会社の遠野と名乗る男が現れ、業界大手への転職を持ちかけてくる。けれど、その頃からサトミの周りで物や人が不意に消滅しはじめる。引き出しにいつも入れていたハッカ飴の缶、採用されたはずのアルバイトスタッフ、進行中だったイベント。自分の記憶と周りの人の記憶に食い違いが生まれ、混乱するサトミに対して、久坂は自分のせいだと語り出す。失われ続ける世界のなかで、失いたくない人を見出した里美は、必死に消滅に立ち向かうが・・・・・・。
あったと思っていたものがなくなっている感覚、同じ場面を繰り返しているような感覚。
確かにそんなことを感じることはよくあります。
そしてとても不安定な気持ちになります。
まさか、この小説のようなことが実際に起きているのかも…。
絶対そうとは言い切れないものの、否定もできないと思います。
この世に確かなものなんて何もない…。なんて不確かな世界に私たちは生きているのでしょう、なんてことを改めて自覚させられました。
★★★★
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