2010/08/17 (Tue) 21:06
講談社
2010年6月
あなたは、こんな夫に、こんな父親に、会ったことがありますか。
家族を守ることが生きてゆくこと。そこに迷いはなかった!
ボクにはオジさんがいた。久しぶりに帰郷したボクは、かつて父のもとで働いていた権三から、若き日の父とオジさんの話を初めて聞き衝撃を受けた。 少年はひとりで日本に渡り、働き続け、家族を持った。戦乱、終戦。妻の弟・吾郎は家族と祖国のある半島に帰る。5年後、朝鮮戦争が勃発。吾郎は戦乱に巻き込まれる。過酷な潜伏生活を強いられた弟のために、妻は夫に救済を求める。戦火の中、夫・宗次郎は義弟を助けに戦場に突進する。救いを求める弟。生還を祈る妻と家族。戦火を走る主人公たち。
家族の絆を命がけで守り抜く父の姿を描いた、伊集院文学の原点。新たな代表作というべき、自伝的長篇小説の決定版。
時代や背景が姜尚中さん著「母 -オモニ」とほとんど重なっていて、いっきにこの時代の朝鮮事情に詳しくなった気がしています。
戦争はやはり悲惨で、現地の人たちは過酷過ぎる状況を強いられてしまいます。
宗次郎の勇気と行動力は驚嘆に価しますが、もしお金がなかったらと思うと…。そのお金は戦争特需のおかげなのが皮肉です。しかしそもそも戦争がなければ、そんな危険なこともする必要がないわけで。
核家族(しかもそれさえも崩壊している事件さえ多発)化している現在では考えられない、大きな意味での家族愛。それがここに描かれています。
連載当時は「ボクのおじさん」というタイトルだったそうですが、書いているうちに方向が変わったのか、興味深いところです。
読み終わった今、現タイトルの意味がしっかり胸に落ち着きます。
内容★★★★
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