2010/08/10 (Tue) 17:09
角川文庫
2008年3月
「大学三回生の春までの二年間、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう」
“薔薇色のキャンパスライフ”を夢見る、誇り高き三回生の「私」。しかし現実はほど遠く、実り少ない二年間が過ぎようとしていた。悪友の小津には振り回され、謎の自由人・樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとは、なかなかお近づきになれない。
いっそのこと、ぴかぴかの一回生に戻って大学生活をやり直したい!
もし、あの運命の時計台前で、映画サークル「みそぎ」に入らず、ほかの道を選んでいれば……。
もし、あの運命の時計台前で、奇想天外な弟子募集に応じず、ほかの道を選んでいれば……。
もし、あの運命の時計台前で、ソフトボールサークル「ほんわか」に入らず、ほかの道を選んでいれば……。
もし、あの運命の時計台前で、秘密機関〈福猫飯店〉へ入らず、ほかの道を選んでいれば……。
迷い込んだ4つの並行世界で繰り広げられる、不毛と愚行の青春奇譚。
パラレル・ワールドを題材にしたした小説。
その発想自体はありふれていると思いますが、独特のユーモラスな文体が面白く、惹きつけられます。
京都の雰囲気がすごく出ていて、無性に行きたくなっちゃいます。
携帯などの現在の小道具が出てこない(もしくは目立たない)ので、どことなく昭和の香りも感じてしまいました。
アニメ化で話題になっているようですが、私は見ていないので、その違いは語れません。
「ペンギン・ハイウェイ」とは全然雰囲気が違いますが、どうやらこちらが森見登美彦さんのカラーのようですね。
和風ファンタジーといった感じでしょうか。
内容★★★★
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2010/08/10 (Tue) 13:51
文藝春秋
2007年8月
「ある人文科学的実験の被験者」になるだけで時給十一万二千円がもらえるという破格の仕事に応募した十二人の男女。とある施設に閉じ込められた彼らは、実験の内容を知り驚愕する。それはより多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームだった―。いま注目の俊英が放つ新感覚ミステリー登場。
限られた空間でのサバイバル―。
無理のない設定もいい感じで、かなり映画向きかなと。
で、調べてみたら、本当に秋に映画公開でした。知らなかった…。
それでこの本売れてたわけだ。納得。
出演は、藤原竜也さん、綾瀬はるかさん、石原さとみさんなど。
う~ん、こういう配役で読んでみるのもよかったかもしれない。って北大路欣也さん?この配役は年齢違いすぎるでしょ。
気になり、サイトの人物紹介見てみると、名前はそのままだけど、動機や職業がかなり違っている人もちらほら。これは微妙ですね…。
かなり、本のことから話はそれましたが。
適度な緊張感もあり、意外性もあって、また場の空気とかの描写も楽しめました。
トリックも騙し的なものはなく、フェアに感じました。
古典のミステリーの引用もあり、そちらにもちょっと興味がそそられました。(多分、そこまで手を出す時間はなさそうですが)
また、エピローグというか、ラストがいいですね。
是非、続きが読みたいです。
しかし私には、この表紙のイラストとタイトルは謎のままです…。
内容★★★★
2010/08/08 (Sun) 13:14
角川書店
2009年5月
平成5年初夏。京都で残虐な事件が発生した。被害者はあおぞら合唱団に所属する長尾靖之と沢井恵美。二人は刃物で刺され、恵美には百箇所以上もの傷が……。容疑者として逮捕されたのは合唱団の指揮者・八木沼慎一だった。慎一は、一貫して容疑を否認するも死刑が確定してしまう。だが、事件発生から15年後、慎一の手記が公開された直後に事態が急展開する。息子の無実を訴える父・八木沼悦史のもとに、「メロス」と名乗る人物から自首したいと連絡が入ったのだ。そして、彼と対峙した後、自分は共犯で真犯人は「ディオニス」だと告白される。
「メロス」の目的は? そして「ディオニス」とは? 被害者遺族と加害者家族の視点をちりばめ、死刑制度と冤罪という問題に深く踏み込んだ衝撃の社会派ミステリ、ここに誕生!
第29回横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞W受賞作!
ミステリーとして楽しめるだけでなく、死刑制度、冤罪、被害者遺族など、いろいろ考えさせられる要素が詰め込まれた素晴らしい作品でした。
死刑制度はかなり難しい問題でもあり、これからも考え続けなければならいと思います。
ストーリー展開も予想を覆され、かなりドラマティックに盛り上がります。
2作目の「罪火」にも期待大です。
内容★★★★★
2010/08/07 (Sat) 15:16
ポプラ社
2009年6月
“心の風邪”で休職中の39歳のエリートサラリーマン・哲司は、亡くなった母が最後に住んでいた美しい港町、美鷲を訪れる。哲司はそこで偶然知り合った喜美子に、母親の遺品の整理を手伝ってもらうことに。疲れ果てていた哲司は、彼女の優しさや町の人たちの温かさに触れるにつれ、徐々に心を癒していく。
喜美子は哲司と同い年で、かつて息子と夫を相次いで亡くしていた。癒えぬ悲しみを抱えたまま明るく振舞う喜美子だったが、哲司と接することで、次第に自分の思いや諦めていたことに気づいていく。少しずつ距離を縮め、次第にふたりはひかれ合うが、哲司には東京に残してきた妻子がいた――。
第三回ポプラ社小説大賞特別賞受賞作。
「四十九日のレシピ」と同じく、こちらでも泣かされました。
日々の生活に追われ、一緒にいるのが当たり前になり、相手を思いやる気持ちがおざなりになる。だから、相手が本当に助けを必要としているときに力になれない。なんて寂しいことは、現実にもよくあることだと思います。
「親子の愛情は変わりはないが、男女の愛情は育てていかないと枯れる」
その通りだと思います。夫婦だからって、思いやりや尊重を忘れてはおしまいですよね。私も以前はそうだったので、その状況は痛いほどわかります。
お金や地位ではなく、やすらぎ。幸せの一つの形がここには提示されています。
シュン君に泣かされ、ラストで泣かされ…。幸せに泣けるっていいですね。
伊吹有喜さんの作品はまだ2つしかありませんが、これからも読み続けていきたい作家の一人となりました。
この本と「船に乗れ!」のおかげで、クラシック音楽が気になってきましたよ。
あと、マッサージも気持ちよさそうだったな。
内容★★★★★
2010/08/06 (Fri) 14:06
ジャイブ
2008年10月
高1春、音楽のできる仲間と澄んだ目の女子に出会った。
音楽一家に生まれた僕・津島サトルは、チェロを学び芸高を受験したものの、あえなく失敗。不本意ながらも新生学園大学附属高校音楽科に進むが、そこで、フルート専攻の伊藤慧と友情を育み、ヴァイオリン専攻の南枝里子に恋をする。
夏休みのオーケストラ合宿、市民オケのエキストラとしての初舞台、南とピアノの北島先生とのトリオ結成、文化祭、オーケストラ発表会と、一年は慌しく過ぎていく。
これも素晴らしい青春小説ですね。
初恋の胸が締め付けられるような、切なさと情熱と喜びがうまく描かれているように思います。
若者特有の、うぬぼれというか、思い上がりも上手に表現されていて、自分を思い返し、恥ずかしいような気持ちにもなりました。
演奏の描写なども臨場感たっぷりで、読んでいるだけでその緊張が伝わってきます。
私の子供は今、吹奏楽をやっていて、これからも音楽に携わっていきたいとのことなので、是非にも読ませようと思っています。
そういう私も音楽に関わっていましたが、人様にいえるようなものではないくらい中途半端で、恥ずかしくもあり悔やまれもします。なんでもっと本気でやらなかったんだろう…。
今から考えると、音楽の素晴らしさ、一生懸命やることの素晴らしさがまるでわかってなかったんだぁと思います。
この本は回想形式で始まっており、この先に苦難が待ち受けているようなのですが、この1巻ではまだそれは明らかになっていません。
先がとても気になります。
また、音楽だけではなく、哲学に関しても素人の私には、大変わかりやすく勉強になりました。
タイトルの意味も、最後まで読めばわかるのかな?
内容★★★★★