2010/06/27 (Sun) 20:13
集英社
2010年3月
印章店を細々と営み、痴呆症の母と二人、静かな生活を送る中年男性。ようやく介護にも慣れたある日、幼い子供のように無邪気に絵を描いて遊んでいた母が、「決して知るはずのないもの」を描いていることに気付く……。三十年前、父が自殺したあの日、母は何を見たのだろうか?(隠れ鬼)
共働きの両親が帰ってくるまでの間、内緒で河原に出かけ、虫捕りをするのが楽しみの小学生の兄妹は、ある恐怖からホームレス殺害に手を染めてしまう。(虫送り)
20年前、淡い思いを通い合わせた同級生の少女は、悲しい嘘をつき続けていた。彼女を覆う非情な現実、救えなかった無力な自分に絶望し、「世界を閉じ込めて」生きるホームレスの男。(冬の蝶)など、6章からなる群像劇。
大切な何かを必死に守るためにつく悲しい嘘、絶望の果てに見える光を優しく描き出す、感動作。
何かしら少しずつ関連している独立した短編で構成されている物語ですが、最後の6章目ですべて収束しているため、長編ともとれなくもない本です。
1章から5章までは、主人公の同士の関わり合いは少ししかありませんが、5章と6章では姉弟と、かなり近い関係となっています。
暗く思い話というのは全体的に共通しているのですが、前半がやるせない気持ちにさせるのとは対照的に、後半はある程度希望があるという、明るい内容に変わってゆきます。
内容★★★★
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