2010/07/03 (Sat) 01:43
講談社文庫
2008年12月
生命を礼賛する行為には驚くほどに価値がない、生はどこまでも儚く朧で、死はどこまでも切なく幻だ。そしてそれはただそれだけのものでありそれだけのものでしかなく、むしろそこにそれ以上の価値を見出そうとすることこそが冒涜だ。生きること、そして死ぬこと、その両者の意味を誰よりも理解し、そしてその意味に殉ずることに一切の躊躇がない誠実な正直者、つまりこのぼくは、8月、縁故あって奇妙なアルバイトに身を窶すことと相成った。それは普通のアルバイトであって、ぼくとしては決して人外魔境に足を踏み入れたつもりはなかったのだけれど、しかしそんなぼくの不注意についてまるで情状酌量してはくれず、運命は残酷に時を刻んでいく。いや、刻まれたのは時などという曖昧模糊、茫洋とした概念ではなく、ぼくの肉体そのものだったのかもしれない。あるいは、そう、ぼくの心そのものか――戯言シリーズ第5弾
「……具体的に、あなたは何の研究をしているのですか? 木賀峰(きがみね)助教授」
「死なない研究――ですよ」
永遠に生き続ける少女、円朽葉(まどかくちは)をめぐる奇怪極まりない研究のモニターに誘われた“戯言遣い”こと「ぼく」は、骨董アパートの住人・紫木一姫(ゆかりきいちひめ)と春日井春日(かすがいかすが)とともに京都北部に位置する診療所跡を訪れる――
が、そこに待ち受けていたのは凄絶な「運命」そのものだった!
“一人で二人の匂宮兄妹(におうのみやきょうだい)”――“殺し名”第1位の「匂宮」が満を持して登場する、これぞ白熱の新青春エンタ。
物語は急展開を見せ、一気に佳境に。
こういう展開になるであろうことを、この私はあらかじめ予測していました。(嘘です)
今までの巻は、すべて伏線として働いていたのか―と思うほど過去のキャラも密接にかかわり合っています。
玖渚の正体の一部も垣間見えた気もするし、零崎人識は本当に死んでいるのかも気になるし、いや、このシリーズ、面白すぎるでしょう。
次回、シリーズ最終作「ネコソギラジカル」。期待するなという方が無理でしょう。
しかし、漫画ネタが多いだけでなく、秋せつらまで出してくるとは…。
久しぶりに「魔界都市シリーズ」も読んでみたくなってしまいました。
内容★★★★★
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