2010/07/29 (Thu) 19:04
集英社
2010年5月
両親は日本人ながらアメリカで生まれ育った栄美は、高校3年にして初めて日本で暮らすことに。「日本は集団を重んじる社会。極力目立つな」と父に言われ不安だったが、クラスメイトは明るく親切で、栄美は新しい生活を楽しみ始める。だが一つ奇妙なことが。気になる男子と距離が縮まり、デートの約束をするようになるが、なぜかいつも横槍が入ってすれ違いになるのだ。一体どうして―?栄美は、すべてが終わったあとに真相を知ることになる。
読み始めは、軽いお話かな、という印象でしたが、結構重かったりします。
3部構成で、1部と2部のまったく異なるお話が、3部で結びつく展開はとてもいい感じです。
主人公の人物像が浅く、どうにも少女マンガ的なノリがあって、それが作品を軽くしてしまっているのがもったいないかな。
ストーリーの展開は好きなだけに、勿体無い印象でした。
「母 -オモニ-」と共に、日本人の中にある差別意識を痛感してしまいます…。
内容★★★★
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2010/07/26 (Mon) 10:36
文藝春秋
2010年5月
昭和6年、若く美しい時子奥様との出会いが長年の奉公のなかでも特に忘れがたい日々の始まりだった。女中という職業に誇りをもち、思い出をノートに綴る老女、タキ。モダンな風物や戦争に向かう世相をよそに続く穏やかな家庭生活、そこに秘められた奥様の切ない恋。そして物語は意外な形で現代へと継がれ……。最終章で浮かび上がるタキの秘密の想いに胸を熱くせずにおれない上質の恋愛小説です。
第143回直木賞受賞。
展開は地味ながら、何故か引き込ませる語りはさすがです。
戦時中であっても、考えてみれば当たり前なのですが、大局が見られないため、実感に乏しかったり、情報操作されていたりする点がリアルでした。
食糧不足とかはあるものの、悲惨なほどの緊迫感がないのも、情報がないとそんなものかなと、納得でした。
日本のニュースだけでなく、もっと視野を広げなければと思わされました。
人と人とのつながり、連帯感…。
何が一番大切なことなのか、考えさせられてしまいますね。
何気に出てくる最後の仕掛けも、やられたって感じでした。
内容★★★★
2010/07/19 (Mon) 09:43
角川書店
2003年5月
玉川上水で男性の扼殺体が発見された。捜査陣に名乗りをあげた老刑事・滝口と相棒に選ばれた巡査部長の片桐。滝口はこの殺人事件に三十年以上前に起きた“三億円事件”との接点を見い出す。その頃、殺された男と三億円事件当時仲間だった連中がにわかに再会を果たしていた。昭和最大のミステリーに、緊密な文体と重層的なプロットで迫る!『19歳 一家四人惨殺犯の告白』で読者を震撼させた著者がものした、犯罪小説の白眉。
映画「ロストクライム―閃光―」ということで手にとってみた原作本ですが、私の体調が悪かったせいもあるのか、ほとんど世界に入ることができず、読んでいてつらかったです。
作者がノンフィクション出身ということもあり、この作品もかなりリアルに組み立てられているようですが、どうにも登場人物に魅力が感じられないのが残念なところです。
登場人物はみんな、目をすがめ、憮然としているようです。というくらい、この表現が多発していたのも、ちょっとげんなりでした。
1968年に日本を一生風靡した事件の概要についての勉強にはなる本です。
内容★★★