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2010/11/11 (Thu) 20:00

講談社
2010年6月

僕は顔を変え、身分を変え、ただ彼女の幸福を願う―。
巨大な陰謀の裏には、誰にも知られることのない、ひとつの小さな物語があった。

父から「悪の欠片」として育てられることになった僕は、「邪」の家系を絶つため父の殺害を決意する。それは、すべて屋敷に引き取られた養女、香織のためだった。
十数年後、僕は自分の存在を消滅させるため顔を変え、他人の身分を手に入れ、人生の傍観者として生きる。そして、居場所が分からなくなっていた香織の調査を探偵に依頼する。街ではテログループ「JL」が爆発騒ぎを起こし、政治家を狙った連続殺人事件に発展。僕の周りには刑事がうろつき始める。香織にはまるで過去からの繰り返しのように、巨大な悪の影がつきまとっていた。
相次ぐテロ、不可解な殺人事件が続く中で、僕は運命にあがなう存在として彼女のために行動を起こす。そこには、「邪」の家系の本質ともいえる絶対的な男の存在があった。

刑事、探偵、テログループ、邪の家系……世界の悪を超えようとする青年の疾走を描く。芥川賞作家が挑む渾身の書き下ろしサスペンス長編。新たなる、決定的代表作。





期待以上に説得力ある小説でした。
ストーリーよりも、散りばめられたその様々な考察に。
例えば、
「知ってた?イラクで、一年間に戦争やテロで死んでしまう人の数より、日本で一年間に自殺してしまう人の数の方が、かるかに多いんだって。…外国のことばかり騒ぐけど、私は日本の社会も残酷だと思う」
う~ん、そんな風に考えたことはありませんでした。
他にも、みんな自分のことで忙しすぎて、国際紛争やらほかの事にあまり関心がない、とか、人を殺めることが自分にどんな影響を及ぼすのか、などなど、納得だし、目を開かされる思いでした。
探偵や整形医などの謎めいた魅力的な登場人物も登場するのですが、かなり謎のままなので、これからもどこかに登場するんですよね?もしくは、すでに他の小説に登場してる?
中村文則さん。追ってみたい作家さんです。

内容★★★★★


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