2010/05/25 (Tue) 00:33
朝日新聞社
2009年9月
横道世之介、長崎の港町生まれ。その由来は「好色一代男」と思い切ってはみたものの、限りなく埼玉な東京に住む上京したての18歳。嫌みのない図々しさが人を呼び、呼ばれた人の頼みは断れないお人好し。とりたててなんにもないけれど、なんだかいろいろあったような気がしている「ザ・大学生」。どこにでもいそうで、でもサンバを踊るからなかなかいないかもしれない。なんだか、いい奴。
「2010年本屋大賞第3位」ということで読んでみましたが、この作者の吉田修一さんって、「2008年本屋大賞第4位」の「悪人」の著者でもあったんですね。全然作風が違うので驚きました。
この作品、もう読んでる最中、笑えて笑えて。なのに、何故か胸がちょっと切なくなるという不思議な本でした。
物語は1980年代後半の1年を通して描かれていますが、途中途中世之介を取り巻く登場人物の20年後が描かれていて、それが一層胸を締め付けます。
世之介は結構みんなの胸に残っていて、それは世之介の計算高くなく飾らない人柄からなのか、それはとても幸せなことなのかもしれない、なんて思ったりしました。とりたてて何かを成し遂げたわけでもないのに、人の記憶に残り続けるというのは、簡単なことではないように思えます。
一番心に残ったのはこの文章でした。
大切に育てるということは、「大切なもの」を与えてやるのではなく、その「大切なもの」を失った時にどうやってそれを乗り越えるか、その強さを教えてやることではないかと思う。
内容★★★★★
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