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2010/04/22 (Thu) 13:21

新潮文庫
2009年12月

最後のレコーディングに臨んだ、売れないロックバンド。「いい曲なんだよ。届けよ、誰かに」テープに記録された言葉は、未来に届いて世界を救う。時空をまたいでリンクした出来事が、胸のすくエンディングへと一閃に向かう瞠目の表題作ほか、伊坂ワールドの人気者・黒澤が大活躍の「サクリファイス」「ポテチ」など、変幻自在の筆致で繰り出される中篇四連打。爽快感溢れる作品集。


独立した短編4編を収録。

「動物園のエンジン」はともかく、後の3作品は珠玉の作品です。

「サクリファイス」は、「ラッシュライフ」や「重力ピエロ」でお馴染みの黒澤さんが主役の物語。このやさしいけど冷めてる独特の語りが堪りません。
ある村を舞台にストーリーは展開しますが、「自分を犠牲にしてまで国民のことを考える政治家はいない」など「魔王」とかに見られる政治批判もしっかり盛り込まれています。

表題作の「フィッシュストーリー」は映画化もされている作品。このお話のように、意図していないところでの人と人との繋がりというか、影響を考えると、感慨深いものがあります。
映画「フィッシュストーリー」は中村義洋監督の作品だそうです。「アヒルと鴨のコインロッカー」「チーム・バチスタの栄光」「ジェネラル・ルージュの凱旋」もこの監督だったんですね。じゃあ、いい作品でないわけがないですね。観なくては。「ゴールデンスランバー」の映画も気になります。

ラストの「ポテチ」はこの短編集の中で、一番のお気に入り。
苦しいのにそれを見せず飄々としている今村君に感動しました。そのつらい出来事をポテトチップスで例えるのも絶妙でした。
勿論黒澤さんが登場しているのも見逃せません。
プロ野球のくだりは「あるキング」への布石とか思ったりして。
とにかく読んでいて心地よいのです。

内容★★★★★



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