2009/09/05 (Sat) 09:57
2006
夏のある日、ヘルシンキの街角に「かもめ食堂」という小さな食堂がオープンしました。その見せの主は日本人の女性サチエ(小林聡美)でした。道行く人がふらりと入ってきて、思い思いに自由な楽しい時間を過ごしてくれる、そんな風になればいい、そう思ったサチエは献立もシンプルで美味しいものをと考え、かもめ食堂のメインメニューはおにぎりになりました。ホントはおにぎりにはちょっとだけサチエのこだわりがあったのでしたが…。
しかし、見慣れない日本人の女性がひとりでやる店を興味本位に覗く人はいましたが、来る日も来る日も誰も来ない日が続きます。それでもサチエは毎日、食器をピカピカに磨き、夕方になるとプールで泳ぎ、家に帰って食事を作る。そして翌朝になると市場に寄って買い物をし、毎日きちんとお店を開く、ゆったりとしたヘルシンキの街と人々に、まるで足並みを合わせるような、そんな時間を暮らしていました。
サチエは、毎日真面目にやっていれば、いつかお客さんはやってくる、とそう思っていたのです。
そんなある日、ついにかもめ食堂の初めてのお客さんがやってきました。日本かぶれの青年トンミに「ガッチャマン」の歌詞を教えてくれと頼まれたサチエでしたが、出だしの歌詞しか思い出せません。
その日の夕方、サチエは「アカデミア書店」のカフェで、難しい顔をして「ムーミン谷の夏まつり」を読んでいる日本人の女性ミドリ(片桐はいり)を見かけます。思い切って「ガッチャマン」の歌の歌詞をたずねると、彼女は突然の出来事に怪訝な顔をしつつも、すらすらと歌詞を教えてくれたのです。
お礼を言うサチエにミドリはフィンランドに来ることになった理由を話し始めます。目をつぶって世界地図を指差したらフィンランドだったというミドリの話に、何か感じたサチエは自分の家に泊まるようにすすめます。そしてやがてミドリはかもめ食堂を手伝い始めます。
トンミとミドリとサチエ、三人だけの日々が続いていたそんなかもめ食堂にもやがて少しずつではありますがお客さんが来るようになってきました。
そんな頃、またひとり訳ありげな女性、マサコ(もたいまさこ)がヘルシンキのヴァンター空港に降り立ちます。空のターンテーブルが回るのを見つめ続けるマサコは一体…。
高い青空と、ゆったり歩く人々。そんなヘルシンキの街角にある、小さいけれど堂々としたたたずまいの店、「かもめ食堂」。優しいけれどきりっとした潔さを持った主人公サチエを取り巻く、普通だけど何だかおかしい人々。そんな人々が織り成す妙に懐かしく心地よい、かもめ食堂の物語が始まります。
映画が始まるとそこには、理想の生活がありました。
喧騒やしがらみ、追われる毎日から切り離されたおだやかな空間がありました。
ストーリー的には何か特にあるわけではないのに、どうしてこんなに惹きつけられるのでしょうか?
主人公のサチエは自然体です。
強く感情を出すわけでもなく、慌てもせず落ち着いています。
「やりたくないことはやらないだけ」
「いつまでも同じというわけにはいかないでしょう。人は変わっていくものですし…」
いつも誰にも敬語。そしてブレがありません。
ああ、こういうのを恰好いいというんだな、なんて思いました。
お金持ちになることより、欲や見栄や妬みなどを捨てた生き方のほうが幸せなんだとしみじみ思わせてくれます。
見かけより深い映画でした。
内容★★★★
PR
Comment