2010/02/06 (Sat) 22:54
1998
監督:マーシャル・ハースコヴィッツ
出演者:キャサリン・マコーマック、ルーファス・シーウェル、オリヴァー・プラット、ナオミ・ワッツ
原題:Dangerous Beauty
上映時間:112分
製作国:アメリカ合衆国
1583年、商業都市として栄えたベネチアだが、女性は男性の所有物としてしか扱われていなかった。
ベロニカ・フランコ(キャサリーン・マコーマック)は青年貴族マルコ(ルーファス・シーウェル)を愛していたが、身分の違いを理由に結婚できなかった。
ベロニカの母パオラ(ジャクリーン・ビセット)の父親が、酒に溺れて資産をなくしパオラはコーティザン(高級娼婦)の世界に入ってそこで一代を築いた。お金のない庶民階級の女が富と権力者に接近し、出世できる道はこの世界しかないことをパオラは身を持って体験してきた。
ベネチアのコーティザンは。体を売っても王様や最高位の男性のパートナーも務めるため、対等に渡り合っていけるだけの教養を身につけ、洗練された身のこなし、礼儀正しい言葉づかいなどをしっかり仕込まれた最高のレディであった。そのため女人禁制の図書館での読書も許され教育も受けられた。
パオラはベロニカの美しさと魅力を持ってすれば、この世界で最高を極めると見抜いていた。母の勧めにベロニカは、「修道女の方がまし」と尼寺をのぞくが、とても耐えられないことに気づく。
マルコの妹ベアトリーチェ(モイラ・ケリー)が政略結婚で年寄りと結婚するのを知ったベロニカは、そのような人生を選びたくなかった。自我に目覚めた彼女は自分の運命を賭けてコーティザンの道を選ぶ。
コーティザンの第一条件は美貌と豊かな肉体だが、「まず男性に快楽を与える喜びを知ることよ」とパオラはいう。若い男性モデルを連れてきてベロニカに性の手ほどきをし、いよいよ社交界へのお披露目の日がやってきた。
美しいベロニカに目をつけたのはランベルティ国防大臣だった。はじめての男性が大臣だというのも話題になり、ベロニカが詩を書いている才女であることもその美貌と共にたちまち広まった。艦隊総督、司教なども彼女に関心を寄せた。
マルコも 叔母が法王の姪だというジュリア・デ・レッゼ(ナオミ・ワッツ)と、愛のない打算だけの結婚をさせられる。ベロニカがコーティザンになったと知って、彼の心は穏やかでない。見違えるばかりあでやかな魅惑の女性へと変身していくベロニカに、マルコは贈物をし接近するが「予約でいっぱいよ」と拒絶される。ベロニカには意地もあり、心では彼を愛しながら夜毎ほかの男に抱かれる身ではマルコを拒んでしまう。
マルコのいとこマフィオ(オリバー・プラット)は、ベロニカに反感を持ち総督の面前で彼女を軽蔑して詩を笑いものにする。剣術も習得しているベロニカはマフィオの挑発に乗って剣を抜いて決闘をはじめる。即興詩をお互いに交わしながら、男性に負けない剣さばきのベロニカだったが、彼女は軽い傷を負う。手当てをしたのはマルコだった。やさしさに触れて、ベロニカは彼への愛と思いが堰を切ったようにあふれ、二人は激しくくちづけを交わしベッドを共にしていた。
ベネチア共和国とオスマン・トルコとは長年の宿敵で争いが絶えなかったが、またトルコ艦隊がマルタ沖に出現し、戦争を仕掛けているという情報に総督は頭を痛めていた。
反トルコのフランス艦隊の援助があれば撃退できると、ベネチアの上層部はフランスのアンリⅢ世にベネチア来訪を求める。
大運河を 14隻のガレー船従えて、豪華な絵巻のようにベネチアにやってきたアンリ王を、総督は「寝室でもてなし攻め落とせ」と命じる。選び抜かれた最高のコーティザンたちを前に、王はマルコにエスコートされていた別席のベロニカに強く惹かれる。
彼女が詩人でコーティザンだと知った王は、彼女を指名し寝室に呼ぶ。アンリ王は、「自分は性倒錯者だ」とベロニカに告白する。 「快楽に酔いましょう」とベロニカは王と一夜を共にした。
翌朝、アンリ王は「艦隊を出す」と宣言する。フランス艦隊100隻の援軍がベネチアを救うが、マルコはベロニカを深く愛すれば愛するほどアンリ王への嫉妬と彼女を独占したい苦しみに悩まされていった。ベロニカは救国の人とたたえられる一方で、多くの一般の女性たちからは、夫を家庭から奪う魔女だと非難され告発される。
戦争は終わったがペストが蔓延し、ベネチアは死の町と化してしまう。ベロニカの母パオラも、娘をコーティザンにしたことを詫びながら息を引き取っていった。
マフィオも、ベロニカや娼婦たちの存在がベネチアを疫病と退廃の町にしたと先頭に立って糾弾。評議会もベロニカを宗教裁判にかけることに同意する。
男を誘惑する退廃の根源、と裁かれるベロニカ。いま一筋に彼女を愛するマルコも、法廷で彼女の判決を見守っていた。
ノンフィクションの本 "The Honest Courtesan"(Margaret Rosenthal)をベースに作った映画。
しかし、この邦題は…。
邦題を気にしなければ、キャストもよく、当時の再現力も素晴らしい、クオリティーの高い作品となっています。
女性がちゃんと扱われなかった時代に、必死に頑張っているベロニカの姿が美しかったです。
観ていて忘れてはいけないのは、権利を主張するばかりでなく、彼女は教養を深めたり、歩く訓練をしたりといろいろ努力しているということ。
この努力は"SAYURI"の芸者を思い起こさせました。
法廷でのベロニカの主張…。
本当の生き方って何なんだろうと考えさせられました。
あまり知られていないのが不思議な映画でした。
内容★★★★
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