2009/12/21 (Mon) 10:12
2005
監督:アンドレイ・クラフチューク
出演:コーリャ・スピリドノフ、デニス・モイセーエンコ、ニコライ・レウトフ
原題:ITALIANETZ
上映時間:98分
製作国:ロシア
極寒の凍てつく大地。見渡す限り雪に囲まれたロシアとフィンランドの国境近くの孤児院に、遠くイタリアから一組の夫妻がやってくる。その来訪に色めき立つ子供たち。孤児院には多くの少年少女が暮らすが、生活は貧しく、身寄りもない。彼らがそこから抜け出る唯一の方法、それは裕福な養父母に引き取られていくことだと判っているのだ。
院長室からお声が掛かったのは、6歳のワーニャ。普段から仏頂面で言葉少ななその少年は突然の幸運に戸惑うが、イタリア人の夫婦は彼を気に入り、養子に引き取る事を決める。その光景を、選ばれなかった子供たちは羨望と嫉妬の目で見つめ、養子になる年齢を逸した年長の少年少女は温かい目で見守りながらも、寂しさを感じていた。
イタリア人夫妻を連れてきた養子縁組の仲介業者であるマダムと院長の間では、金銭のやり取りがなされていた。貧しい孤児院にとって、子供を養子に出す手数料が大きな収入なのだ。子供を売るような行為に後ろめたさを感じながらも、背に腹は変えられない院長は、マダムに次の養子候補の子供たちを紹介する。
正式な手続きがなされた再来月に、イタリアへ引き取られて行く事が決まったワーニャ。周りは彼の事を“イタリア人”と呼んでからかう。しかし当の本人は今ひとつ実感が沸かない。外国人に引き取られるのは臓器移植のためという悪い噂も聞く。かつて孤児院で仲良しだったムーヒンも養子に引き取られたが、今は元気にしているのかどうかも分からない。
そんなある日、突然ムーヒンの母親が孤児院に現れる。捨てた息子を探しに来たというのだ。激昂し、追い返す院長。院を後にする彼女を、子供たちは好奇の視線で見つめる。帰りのバスを待つムーヒンの母親に偶然呼び止められたワーニャは、ムーヒンの院での生活や彼を引き取った養父母の事を聞かれる。「ある日、ふと気付いたの。もう私にはあの子だけだって」涙ながらに語る彼女の言葉を聞くうち、ワーニャの心に今まで意識しなかった“ほんとうのママ”の存在が芽生える。
もしかしたら養子に行った後、自分のママも探しにくるかもしれない。そのとき、孤児院は居場所を伝えてくれるだろうか? 養子にいくことは本当に幸せなのか? ムーヒンだって養子にいかなきゃ、ママに会えた。「やっぱり、ほんとうのママがいい」面倒見のいい少女ナターハに気になり始めたことを相談するが、馬鹿な事を考えずにイタリアへ行くべきだと諭される。
ムーヒンの母親が自殺したという報せが孤児院に入り、ママへの想いは日増しに強くなっていく。なんとかママの手掛かりを見つけたいワーニャは、資料室に出生記録が保存してあることを知るが、肝心の文字が読めない。売春で金を稼ぐ年上の少女イルカに「金と交換で字を教えてあげる」と言われたことを真に受け、院を陰で牛耳る不良グループの金をごまかして盗もうとする。理由を知ったグループのリーダー、カリャーンは、自分が母親に虐待され捨てられた過去を明かし、黙ってイタリアへ行く方が幸せだと薦める。
同情したソニアの教えで、字の勉強を始めるワーニャ。独学ながらも毎日一生懸命に取り組み、見る見るうちに文章が読めるようになる。そして遂に院長から鍵を盗み、資料室へ入り込むことに成功する。しかし資料に載っていたのは「両親なし」の情報だけ。だが、前にいた別の街の孤児院の住所が分かり、そこへ行けば何か分かるかもしれないと考える。
ワーニャがイタリア行きに悩んでいることを友人のアントンが院長につい漏らしてしまい、それを聞いたマダムが血相を変えてやって来る。もし縁組が破談すれば、大金を失うのだ。養子に行かなければ更正させるための特別施設へ連れて行くと脅され、涙ぐむワーニャ。院長からも養子に行く方が絶対に幸せで、この機会を逃すなと説得される。迎えが来る明日まで監禁される部屋の窓から外を寂しく眺めるが、ママへの想いは募るばかり。
霧が立ち込める早朝、ワーニャはイルカの声で目を覚ます。院を脱走して、ママを探しに行こうと言うのだ。凍てつく寒さの中、二人は院の門をくぐって駅への道を急ぐ。二人の脱走に気付いたマダムとその屈強な用心棒グリーシャ、院長が車で後を追ってくる。イルカと別れ、ひとり列車に乗り込んだワーニャは、はたしてママに会うことができるのだろうか……。
実話を元にしているそうです。
このように、人身売買が公然と行われているロシアの現実に戦慄するとともに、ワーニャの、母に会いたいというひたむきな気持ちに心打たれます。
ストーリーは至ってシンプルですが、ワーニャの、不安にとまどいながらも必死で母の元へ向かおうとする、その描写が素晴らしく、胸に迫ってきます。
母に会いたいがためだけに必死に字を覚えたワーニャ。語学をマスターするためには、それぐらいのモチベーションが必要なのかもしれませんんr。
どうでもいいですが、これ、初雪が降った日に観たので、よけいに寒かったです。
内容★★★★
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