2009/10/15 (Thu) 11:16
2007
「ボウリング・フォー・コロンバイン」「華氏911」のマイケル・ムーア監督が、今度はアメリカの医療保険問題に鋭いメスを入れる社会派ドキュメンタリー。アメリカは先進国の中では唯一、公的な国民皆保険制度を持たない国。国民の健康保険の大半は民間の保険会社に委ねられている。そのため、高い保険料などが障壁となって、実に約4700万人もの国民が無保険の状態にあるという。しかしムーア監督は、営利を追求する民間企業が運営する現在の健康保険の矛盾は、高い保険料を払って加入している大多数のアメリカ国民にこそ深刻な影響を与えていると主張し、豊富な事例を基にその実態を明らかにしていく。
のっけから目を釘付けにする演出は見事としかいいようがありません。
そして、かなりの攻撃を受けることを覚悟の上で、こういう問題に取り組んでいくマイケル・ムーア監督の姿勢には感心します。
テーマとその切り口も素晴らしいですが、わかりやすく、且つ楽しませてくれるその巧みな演出は、本当に素晴らしいですね。
アメリカの保険制度の驚愕な事実が次々と紹介され、私のアメリカに対して持っていたイメージはどんどん崩れてゆきます。
利益追求の悪しき点も浮き彫りにされ、民主主義一辺倒も問題があることがわかります。
虚偽はないにしても、誇張はあるかもしれません。
それは、わかりやすくするためだと私は納得した上で観ていました。
逆に、ここでは描かれていないもっと恐ろしいこともあるのかもしれません。
どこまで信じるかは個人個人が決めることだと思いますし、これにより医療制度などに関心をもつ人が増えることが重要なのだと思いました。
現に私がそうです。
カナダ、イギリス、フランスなどは治療費がかからないといっていましたが、すべては税金で賄われているはず。
医療だけにスポットをあてているため素晴らしく思えますが、他の面でしわ寄せが来ていないか調べる必要はあるのかもしれません。
とにかく、こういう問題提議ができること自体素晴らしいです。
もうそれだけでこの映画の存在価値があります。
他人事ではなく、日本の医療制度をじっくり考えてみたいと思います。
マイケル・ムーア監督の次作「キャピタリズム~マネーは踊る~」(2010年1月公開予定)にも、期待が膨らみます。
原題は"SiCKO"。
「病的なヤツ」みたいな意味のスラングだそうですが、うまいこと掛けたタイトルですね。
でも、日本でそのままのタイトルはちょっといただけないのではないでしょうか。
ダサいし、硬いけどまだ、「マイケル・ムーアの医療保険制度問題」みたいなタイトルのほうが良かったような気がします。
内容★★★★★
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