2010/07/02 (Fri) 09:31
祥伝社
2009年10月
「ほかならぬ人へ」
二十七歳の宇津木明生は、財閥の家系に生まれた大学教授を父に持ち、学究の道に進んだ二人の兄を持つ、人も羨むエリート家系出身である。しかし、彼は胸のうちで、いつもこうつぶやいていた。「俺はきっと生まれそこなったんだ」。
サッカー好きの明生は周囲の反対を押し切ってスポーツ用品メーカーに就職し、また二年前に接待のため出かけた池袋のキャバクラで美人のなずなと出会い、これまた周囲の反対を押し切って彼女と結婚した。
しかし、なずなは突然明生に対して、「過去につき合っていた真一のことが気になって夜も眠れなくなった」と打ち明ける。真一というのは夫婦でパン屋を経営している二枚目の男だ。「少しだけ時間が欲しい。その間は私のことを忘れて欲しいの」となずなはいう。
その後、今度は真一の妻から明生に連絡が入る。彼女が言うには、妻のなずなと真一の関係は結婚後もずっと続いていたのだ、と。真一との間をなずなに対して問いただしたところ、なずなは逆上して遂に家出をしてしまう。
失意の明生は一方で、個人的な相談をするうちに、職場の先輩である三十三歳の東海倫子に惹かれていく。彼女は容姿こそお世辞にも美人とはいえないものの、営業テクニックから人間性に至るまで、とにかく信頼できる人物だった。
やがて、なずなの身に衝撃的な出来事が起こり、明生は…。
「かけがえのない人へ」
グローバル電気に務めるみはるは、父を電線・ケーブル会社の社長に持ち、同じ会社に勤める東大出の同僚・水鳥聖司と婚約を控えて一見順風満帆に見えるが、一方でかつての上司・黒木ともその縁を切れずにいる。黒木はいつも夜中に突然電話を寄越し、みはるの部屋で食事を要求した後、彼女の身体を弄ぶのだ。みはるはみはるで、聖司という婚約者がいながら、何故か野卑とも言える黒木に執着している。黒木が言うには、五歳から大学に入るまでの十三年間、都内の養護施設を渡り歩いていたというが、黒木を見ていると、苦労が必ずしも人を成長させるとは限らない、とみはるは思う。
一方で、社内では業績不振も相俟って、他社との合併話が進行していたが、それを巡る社内の政争のあおりを受けて、黒木の後ろ盾である藪本常務の立場が危うくなっていた…。
2010年 第142回 直木賞受賞
結婚や恋愛は、始めのうちはどうしても見た目やフィーリングでいってしまうのかもしれませんね。
この小説では、自分にとっての本当に大切な人、自分にとって本当に必要な人を見つけるまでの、自分の気持ちに気付くまでの紆余曲折が上手く描かれていると思いました。
結婚って、家庭を築いていくことって、本当に難しいことだと思います。
どちらかが我慢していれば、それでうわべは成り立つのかもしれませんが、本当にそれでよいのでしょうか。
お互いを高めあって、尊重しあって、やさしく思いやりを持って接していける夫婦でいられるといるとしたら、それは何にも勝る幸せなことだと思います。
内容★★★★
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2010/07/01 (Thu) 15:25
2010/07/01 (Thu) 12:59
WildStorm Productions
November 2000
WildStorm Productions
March 2001
1943年、ナチスにスパイとして潜入したJenny Sparksは、ひとつの大きな卵を奪い逃走していた。しかし、ナチスの兵に追いつかれ、大量のトランキライザーを投与されてしまう…。
#04"Many Happy Returns"は、未知の生物の卵(Swift)を保護し逃亡するJennyが描かれています。
その30年前にはヒトラーとも出会っており、ヒトラーに絵を止めさせたのはJennyの言葉ということになっています。
そして30年後、捕虜となったJennyは、ヒトラーの命により解放されます。
#05"THERE'S NOTHING I HAVEN'T SUNG ABOUT"は、Enginnerとの出会いが描かれています。
内容★★★
難易度★★★
2010/07/01 (Thu) 10:33
2010/07/01 (Thu) 09:16
文藝春秋
2010年3月
秋葉原で若い女性の不審死に遭遇した浅見光彦は、出張先の淡路にて日本神話、民俗、古くからの習慣が絡み合う、不可解な殺人事件に巻き込まれる。やがて政治家の陰謀まで見え隠れし、事件の背後にある組織に光彦は戦慄するのだった――。
古事記に描かれた「国産み」神話、伊勢や奈良の遺跡、淡路の「拝み屋」の呪詛、民間信仰などが登場する一方、官僚や政治家と大企業の癒着、怪しい団体まで描かれる傑作長編ミステリーです。
内田康夫作家デビュー30周年3ヵ月連続刊行第2弾。
浅見光彦が、始めて携帯を所有した記念すべき(?)作品。
ちなみに、契約会社はドコモです。関係ないですが、私はauです。
しかし、母の許可を得ないと携帯の所有が認められないとか、事件に関わるのも、母に怒られるのを恐れ、こっそりやっていることとか、もはや笑えるのを通り越して、寒くなるときさえあります。
女性にオクテなのは許せるとしても…。
今回の舞台は淡路島。
読んでいると、行ってみたくさせてくれるのと、その地域のことをわかりやすくざっくり教えてくれるのはありがたいことですが、内容的にはありふれた感じというか、インパクトに欠けるというか、緊迫感がないというか、イマイチのめり込めないものがありました。
無難にまとまりすぎているというか…。
下巻では急展開があることを期待しつつ…。
内容★★★