2010/11/06 (Sat) 20:16
中央公論新社
2010年9月
荒廃した渋谷でしたたかに生き抜くホームレスの少年・イオン。彼は家族をもたず、全てのおとなを敵視する。愛することを知らない孤独な魂はどこへ行くのか――〈画〉スカイエマ
特に時代を表す言葉はないですが、荒廃した街やスカイエマさんのイラストが「AKIRA」を思い起こさせます。といっても、アクションがあるわけではないですが。
イオンという孤児の少年の成長物語です。人を敵視してきた少年が、苦労を経て最後には人に優しさを理解するという、そういったお話です。
両親が揃っていようがいよまいが、人は社会でいろいろな他人と接触し影響も受けるわけで、家庭環境が悪くても支えてくれる人がいれば、人はまっとうになれるのでしょう。
新聞連載ということで、スカイエマさんのイラストは47枚あったそうですが、すべてが使われていないのが残念です。せめてサイトの特設ページの人物紹介だけでも欲しかったです。
内容★★★★
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2010/06/12 (Sat) 21:56
新潮社
2010年2月
女は、本当に罪深い――。今この一瞬、あなたと抱き合えれば、愛さえあれば、私は構わない。昭和十七年、南方への命懸けの渡航、束の間の逢瀬、張りつく嫌疑、そして修羅の夜。見たい、書きたい、この目に灼き付けておきたい! 波瀾の運命に逆らい、書くことに、愛することに必死で生きた一人の女を、渾身の筆で描く傑作小説。
ヘビーな本でした。読み終わったとき、どっと疲れが…。そのパワーに当てられてしまったからでしょうか。
林芙美子という作家、恥ずかしながら私は知らなかったのですが、その生き方にも圧倒されますが、膨大な参考文献と共にこの本を書ききった桐野夏生さんのパワーも恐るべしといった感じです。
戦時中の厳しさも伝わってきて、勉強にもなりますが、不倫というのが個人的には拒否反応が…。
すごい生き方だとは思いますが、あまり好きになれそうもないです。
エピローグの締め括り方は好きです。
内容★★★★
2010/05/14 (Fri) 11:23
新潮社
2008年5月
清子は、暴風雨により、孤島に流れついた。夫との酔狂な世界一周クルーズの最中のこと。その後、日本の若者、謎めいた中国人が漂着する。三十一人、その全てが男だ。救出の見込みは依然なく、夫・隆も喪った。だが、たったひとりの女には違いない。求められ争われ、清子は女王の悦びに震える─。東京島と名づけられた小宇宙に産み落とされた、新たな創世紀。谷崎潤一郎賞受賞作。
映画になるということで読んでみました。
エンターテイメントかと思いきや、案外そうでもなかったです。
人間の欲と醜さが前面に出ていて、ネガティブな感じ。極限での人間の本性はこんなものかもと思うと、リアルかもしれませんが。
過酷な生活の描写も読んでいて辛かったです。
こんな悲惨な状況になって、自分が生き延びられるのか、自信がないです。それだけ、甘えた生活に慣れきっているのでしょうね、私は。
当たり前に送っているこの生活が、どれだけありがたいことなのか考えさせてくれますが、しばらくするとまた忘れてしまうのだろうなぁ。
清子もワタナベも、凄まじい生存本能を発揮して、なりふり構わないけど、そこまでして生き延びる意味ってなんなのでしょうか。家族とか守るものがあってという話なら別ですが、あくまでも自己のことのみ考える彼らがどうにも理解できません。
章ごとに少しずつ時間が跳んでいて、状況も変わっていて、何故こうなったのだろうと思わせる手法は、読み手を惹き付けていい感じでした。
ラストも、私の予想を覆してくれました。納得したくはないけれど、人生こんなものかもしれませんね。
内容★★★★