2011/01/20 (Thu) 16:25
角川書店
2010年9月
酒浸りの元殺し屋「木村」は、幼い息子に重傷を負わせた悪魔のような中学生「王子」に復讐するため、東京発盛岡行きの東北新幹線〈はやて〉に乗り込む。
取り返した人質と身代金を盛岡まで護送する二人組の殺し屋「蜜柑」と「檸檬」は、車中で人質を何者かに殺され、また身代金の入ったトランクも紛失してしまう。
そして、その身代金強奪を指示された、ことごとくツキのない殺し屋「七尾」は、奪った身代金を手に上野駅で新幹線を降りるはずだったのだが……。
まるで映画を観終わったような後のような満足感。
さすが伊坂さん、すごく楽しめました。
舞台はほぼ新幹線のなかだけ。
そこで繰り広げられる殺し屋たちのバトル。
前作「グラスホッパー」から登場するのは、鈴木と槿。
でも、あくまでも彼らは脇役で、新キャラとなる木村、七尾、王子、蜜柑&檸檬がメインとなります。
キャラつくりも上手いし、話の展開も、小道具の使い方も上手いです。
今回もちゃんと、キャラの会話に伊坂さんの考えが散りばめられているし。
大満足の一冊でした。
内容★★★★★
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2010/09/20 (Mon) 01:26
双葉社
2010年6月
伊坂幸太郎の『バイバイ、ブラックバード』は、太宰治の「グッド・バイ」から想像を膨らませて創られた。なぜこの作品を書こうと思ったのか、作品に込められた想い、創作秘話などを語ったロングインタビューと、書評家による解説、未完にして絶筆となった「グッド・バイ」を収録。
なるほど、こういうことを思いながら書いていたんですね、なんてことがわかったりして、ファンとしてはうれしいです。
他の作品や著者でも、インタビューとかは、雑誌やネットには出ていますが、どうも見落としがちで、こういうふうにちゃんとした本で出ると読む機会も増えて、うれしいです。どんどん、出して欲しいな、こういう企画。
インタビューを読むと、無性に太宰治さんの「グッド・バイ」が読みたくなるはず。というわけで、ちゃんと収録されている辺りも気がきいていていいですね。
中学生の頃、太宰治さんにはハマった口ですが、この作品の印象はなかったですね。たしか、読んだはずですが…。毛色が違うからかな?
約100ページと薄いものの、ハードカバーにしては値段が抑え気味なのも高感度大です。
内容★★★★
2010/08/27 (Fri) 11:35
双葉社
2010年7月
一話が50人だけのために書かれ、自宅に届けられた「ゆうびん小説」に、書き下ろしの最終話が加えられ、遂に単行本化。
自分も誰かに贈りたくなるような連作短編集。太宰治の絶筆「グッド・バイ」から想像を膨らませて創った、まったく新しい物語。
「グッド・バイ」は学生の頃読んだはずだけど、まったく覚えていない…。そう思うと、今読んでいる本たちも、どれだけ覚えていられるやら、不安になります。
さて、内容ですが、主人公は5人の女性と同時に付き合っている男性で、ある事情ができ、その女性たちと別れなければならなくなり、一人ひとりに別れを告げていく、という感じで話は進みます。
5股もかけている主人公は、最低で軽蔑すべきところですが、そう思えなくさせるのが、この伊坂さんの真骨頂とも思えます。
深刻な内容のはずなのに、どこかおかしく、軽妙に進んで、何故か爽やかな印象を受ける、不思議な魅力の詰まった小説でした。
内容★★★★
2010/07/20 (Tue) 16:02
新潮社
2010年3月
みんな、俺の話を聞いたら尊敬したくなるよ。我が家は、六人家族で大変なんだ。そんなのは珍しくない?いや、そうじゃないんだ、母一人、子一人なのはいいとして、父親が四人もいるんだよ。しかも、みんなどこか変わっていて。俺は普通の高校生で、ごく普通に生活していたいだけなのに。そして、今回、変な事件に巻き込まれて―。
またもや、ありえない設定なんだけど、素直にうらやましいなと思わせるその説得力はたいしたものだと思います。この作者の手にかかると、何故だか、バカらしいなんて思えないのです。
今回も読んでいる間、とても楽しい幸せな時間を過ごせた気がします。
運動会とか授業参観とか、4人で必死に参加している場面を想像するだけで、とても幸せな気分になります。
張り合っているようで、露骨でもなく、非協力的というわけでもなく。
やっぱり、この状況が許せるくらいだから、4人とも心が大きのでしょうね。本当に素敵な家族です。
最後のほう、若干ご都合主義的な終わりに感じなくもないですが、そんなことどーでもいいのです。もしまた彼らに会えるのなら、諸手で大歓迎です。
内容★★★★★
2010/05/26 (Wed) 01:25
講談社
2004年5月
「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々―。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。
伊坂幸太郎さんらしい、爽やかな読み心地の本でした。
破天荒な言動や発言で、尊敬されているようには見えない陣内ですが、ときにハッとさせられることを言うから、それがまた良いですね。
たとえば、「そもそも、大人が恰好良ければ、子供はぐれねえんだよ」とか。
目の不自由な長瀬にも、何の気遅れもせず、まったく普通の態度で接することのできる素晴らしい人でもあります。
こんな知り合いがいたら楽しいだろうな、となんだか物語の登場人物がうらやましくもあります。
横道世之介君とはまた違ったタイプの、人の心に何かしら残していくタイプですね。
何しろみんな、人生が楽しいって感じがうらやましいです。
内容★★★★